転職したら双子のイケメンがついてきた
たぶん今でも、卒業アルバムで見て、そんな子いたなと思うくらいだろう。
それなりの規模の学校で、クラスも違えば部活も違う。相手は目立つ存在でも、改めて会う機会も話すきっかけもなかった。
ましてや私自身、色恋にまだ興味もなかった年頃で、お互いの印象もその程度だろうけれど。
そしてこんな機会がなければ、会うこともなかったかもしれない。
話にしか聞いていないし、聞いてからも一度もあっていないんだけれど、気の毒だけれど、会う前からろくなイメージがない。
「よろしければ奥にどうぞ。真来さん、お茶をお願いします」
真言さんが顔を出すと、キクさんが驚く。
「あれまあ、おんなじ顔がふたつ。寝ぼけとるんですかのう」
「やはりご存知なかったようですね。双子なんですよ、僕たち」
キクさんがポカンと口を開けて固まっている。
「そんなことも知らなかったの!?婆ちゃん!?」
むしろ望絵がそのことに驚く。
しょっちゅう来ているのだから知っているものとばかり思っていたようだ。
案内されながら、狐につままれたように、ふたりの顔を交互に見てぽーっと見惚れるキクさん。
「あと20年若かったら…」
ボソッと口にした。