転職したら双子のイケメンがついてきた
―――別の日の夕方。
学校からの帰り道にある電車の高架下。同じ方向でも好んで使う学生はいない。物騒なので、数人で通るくらいだ。
とくに若い女性は通らない。
そんなことは気にしない萌絵は、いつも通り自転車を1人で漕いで家路についていた。
と、薄暗い数メートルの高架出口に1人の男が立っていた。
「…龍人(リュウジ)??」
萌絵の元カレの友達だった。
通せんぼするように、両手を広げて立ちはだかる。
「どいてくんない!?何か用??」
突っ慳貪に話し掛ける萌絵。
けれど前かごを掴んで止めようとする。
「放して…」
背後から別の男に抱き付かれた。振ったばかりの彼氏だった。
「新士(シンジ)??何すんのよ!?」
咄嗟に自転車を飛び降りると、その胸を逆に押して突き放した。
「…な…」
バランスを崩させ転ばせて、素早く起き上がる萌絵。
「あたしを襲おうなんて、10年早い!!」
実は柔道部の黒帯だった萌絵。
強かったけれど、その性格上、慕って着いてくるものはおらず、主将候補からは外された。
けれど結果的にそれもまた、我が儘さに拍車を掛ける形になってしまった。