転職したら双子のイケメンがついてきた


「いらっしゃいませ。ご予約いただいた木下様とお連れ様ですね??」


「はい」


階段を降りた入り口、店内で。
聞き覚えのある声に、ふと顔を上げた沙紀が驚く。


「ひさ……」


言いかけて飲み込んだ。


こんなところでアルバイトをしていることがバレたら、仕事はおろか結婚までなかったことにされてしまう。


一般的に男の人の方が、女性の変化に気付きにくい。


尚且つ、まさかこんなところにいるとは思っても見なければなおさらだ。


「愛生(アキ)さん、お客様」


沙紀の源氏名だ。
そんなことを知るよしもないチーフに着席を命じられたけれど、


「いらっしゃいませ」


どさくさで、後から来た別の客に絡み付き、目配せして別の女性に手を合わせた。


「今度埋め合わせするから」


沙紀は要領もよかった。


なんとか見つかることなく、沙紀は別の客の接待に付くことができた。



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