転職したら双子のイケメンがついてきた


―――某所。
小高い山道の脇に、地元の人間の墓が建ち並ぶ一角。


琉生の母親の墓はあった。


「………あと一週間だよ、母さん」


きれいに掃除をし、花を供えて線香を立て、墓前で手を合わせる琉生の姿はあった。


「俺のこと、守ってくれよ??」


まだ幼かった琉生。


母を病気になるまで働かせ、ついには死に追いやった父を、彼は許すことができなかった。


そんな中年男たちに父を重ね、金を巻き上げるのが琉生の復讐だった。


そんな父を手に掛けた日から、毎月、母に報告し、年に一度はひっそりと命日に墓参りしていた。


―――顔を変え、名前を変えて生きた心地のしないまま、抜け殻のように生きていた。


父がいなくなったことで、すべてが収まったはずなのに。


―――俺は何をしてるんだろう。


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