転職したら双子のイケメンがついてきた


「何かご用ですか」


古びたアパートの一室から顔を出したのは、整った顔立ちのイケメンだった。
20代くらいだろうか。


すらりとした長身の若者は、横長の眼鏡の縁をかけ直し、こちらを一瞥した。


オールバックにし、背中まである髪は後ろでひとつに束ねられ、いかにも勤勉で偏屈なニオイがぷんぷんした。


着潰したTシャツと擦りきれたデニムで、突っ掛けを履いている。自分の部屋なのだから当然だけれど。


「あの、えっと…」


「河志多琉生さん、ご存じですね??」


ビクビクする私の後ろから壬言さんが尋ねた。


「知りません」


言い終わる前にドアを閉めようとした。


「まま、待ってくださいっ!!」


反射的に無防備にも手で止めようとした。


すかさず壬言さんが足を挟んでくれたお陰で私の指は無事だった。


けれど、ガシャンと音がして足が挟まれた。
痛そうだ。


「……ってえ」


こんなときなのに、背中に密着する胸板とふと掛かった息にドキッとした。



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