転職したら双子のイケメンがついてきた

「憧れだったんです、私、床屋で顔剃りしかしたことなくて」


うっとりする川下香緒里(カワシタ カオリ)。


やはり女性だ。髪を触られカットされ、リクライニングのシャンプー台に座らされただけで、恍惚の表情だ。


「真来さん、なんとなく私と同じニオイがします」


やはりわかるようだ。
なんとなく感じた。


不器用ながら頑張って生きている。


爪の手入れもし、オールバックのロングヘアは、ちゃんと自分なりに手入れを施し、艶々だった。


美容院だのネイルサロンは抵抗があってなかなか行けないようだけれど、身なりはきれいだ。


内面は女性的なのに、尻込みしてしまって、どんどん楽な男性的な方向に行ってしまったようだ。


服装もそういう諦めからか、ロンTやトレーナー、デニムしか身に纏えなくなってしまったようだ。


しかもお洒落なダメージ加工ではなく、本当に古着屋で買ったか、着潰した服だ。


「実はコンビニで深夜のバイトしながら作家活動してるんです。だからあんまり必要に迫られなくて」


メイクもおそらく社会に出てからしていないだろう。


「よかったら、一緒に働きますか??」


思わず口を突いて出た。
自分でも驚いた。


< 358 / 383 >

この作品をシェア

pagetop