転職したら双子のイケメンがついてきた
―――空港にいた琉生。
国際線だ。
紺のスーツに身を包み、サングラスを掛け、目立たないようにしていた。
つもりだった。
平日で乗客はまばらだけれど、浮いていた。
ボディーバッグとアタッシュケースには有り金全て入れていた。
少しの着替えの入った旅行用のキャリーケースは機内に送り終わっていた。
「……当分日本ともお別れだな」
ふと、近付いてきた少年のような小柄な人物が、すれ違い様にアタッシュケースを引ったくって走った。
つばの長い黒のキャップを目深に被り、髪も見えない。黒っぽいジャンパー、デニム。
顔も見えないけれど華奢な感じから高校生くらいの少年に見えた。
「…な……!?」
一瞬固まり言葉をなくす琉生。
けれどすぐに我に返ると、怒鳴った。
「待て!!泥棒!!」
早い。
とんでもない早さで脇の通路に駆け込む。
琉生の乗る便とは違うけれど、まだ時間はある。
「バカだな、外に逃げればいいものを、わざわざ逃げ道を塞ぐなんて」
言いながら追い掛けて走った。