転職したら双子のイケメンがついてきた
その顔色の悪い芳子さんに、名刺を見せる玖美さん。
「西塔弁護士事務所から来ました、和久井と申します」
「…はあ……頼んでませんが…」
「まだ頼まれてはいませんので、ご安心ください」
なんだか妙な話だ。
誰からも依頼を受けていないのに何の用件で来たのか。
弁護士を呼べ、と簡単に口にするが、雇うのも使うのもタダじゃない。料金というものは確実に発生する。誰が出すのか。
そんな金があったらとっくに冤罪を解いて外に出られているかもしれない。
「お伺いしたいことがありまして」
「……何でしょう」
力なく。
「高杉真依という女性をご存知ですね??」
「ああ、はい。よく知ってます。…彼女が何か」
「直接、彼女がどうということではありません。彼女に猫を預けましたね??」
「あっ、はい」
「その猫が、行方不明になりまして。あっ、私どもの手違いで」
「ああ…いつかはそうなると思いました。あっ、彼女は無事なんですか??」
「無事、といいますと」
「実は猫の、ハルの背中にマイクロチップを埋め込んだのは私なんです」
「えっ!?」
「一族、三人のお子様たちは、誰ひとり、旦那様を介護される方はいらっしゃいませんでした」
玖美さんがメモを取る。