転職したら双子のイケメンがついてきた


思い出したくもないが、忘れることもできない。


私、榮喜真来(サカキマキ)は、今月に入って、いや、今週に入って。


三度の失態をしでかした。


ひとつ目は月曜。
コピーを取って会議で配るはずの重要な資料の原本をシュレッダーにかけ。


おまけにどのボタンを押したのか、コピー機に拒否られ、紙が止まらなくなり、終いにはシューン、と音を立て止まってしまう大惨事。


二つ目は火曜。
お客様に出そうとしたお茶をスーツの股間にぶち撒け。


三つ目は、昨日。
やっぱりお茶をぶち撒けた。課長のパソコンに。


画面に染み状の傷が入り、更にお茶をキーボードが一瞬で吸い込み、データも飛んだ。


なんでUSBに移さなかったのか。そんなこと課長に言えるはずもなく。
仮に移してたところで本体はパーだし。


残りの有給を消化した後は、さようならだ。


そもそも大して役に立ってないし、やる気も見せてなかったし。


入社以来憧れの、隣の部署の稲垣くん(同期)に瞬殺で振られて以来。


営業だった稲垣慧(イナガキサトシ)くん。
某有名大学出身で、頭脳明晰で爽やかなイケメンくん。


「……美人なんだけど、なんていうか、……地味??なんだよね」


と、いうことらしく。
その直後、今年新卒で入り立ての受け付け嬢と、デキているとかいないとか噂を耳にした。


そりゃそうだよね、と笑うしかない。



< 4 / 383 >

この作品をシェア

pagetop