転職したら双子のイケメンがついてきた
屋敷の呼び鈴を鳴らす。
大きな洋館だ。何坪あるのだろう。ただ手入れがされていないようで、植えられた花も枯れ、庭も雑草が伸びつつあった。
主のいなくなった屋敷は、大きい脱け殻のようだ。
日が暮れたり、どんよりとした天候の中では、薄気味悪そうですらもある。
むしろ主の不在を嘆いているようにも見えた。
「…どちら様??」
大きな門扉の向こうにある邸の入り口扉を開けて顔を出したのは、50代くらいの婦人だった。
質の良さそうな丈長のブラウスにゆったりした黒いパンツ姿で、白髪混じりの髪は後ろできれいに束ね、ふくよかな体型の上品な雰囲気だ。
「あの、花屋です。ご注文の花をお届けに伺いました」
私が接客担当だ。
「誰か頼んだかしら…??私は窺ってませんけど」
「あっ、ご長男様から、観葉植物を置きたいと承っておりまして」
車がないことから、不在なことは確認済みだ。
「雅人が…??困ったわね、お代がないわ」
「あっ、お代は頂いてますので、どちらかにお運びしましょう」
それも出任せだった。
屋敷に入るのが目的だ。