転職したら双子のイケメンがついてきた
が。
当然ながら、私の部屋から拐ってきた人間がいるわけで。
拐ってきたからには逃げないように見張る人間もいるわけで。
犬と違って繋いでもおけない。
キャリーケースに入れっぱなしもできないわけで。
どこにどう置くかということになる。婦人は人がいいから気づいてないだけだろう。
中に入ると半地下らしき階段を見つけて降りてみる。
「何あんた」
脇からいきなり声が聞こえて、ビクッとなる。
こっちは若い男だ。いやむしろ高校生くらいか。
白いTシャツにチェックのシャツを羽織り、デニム姿だ。髪は短めでもう少し大人になったら爽やかなイケメンになるタイプだろう。
「誰!?何か用!?」
ずいぶん突っ慳貪な話し方だ。
とはいえ、知らない人間がいきなり家に入ってきたら怖いだろう。声変わりしきっていない感じだ。
「えっと、私、花屋なんですけど」
「……花屋??花屋が何の用??」
相手が女性ということもあってか、ほんの少し表情が和らいだ。
「お、お手洗い、ないですか??」
怪しいだろうと思いつつ、精一杯の嘘をつく。
「トイレなら、そっちに…」
と、また、にゃあお、と聞こえた。
「あっ、猫ちゃんいるの??」
わざとらしい。
けれど意外にも、少年は猫をわざわざ囲いから出すと抱っこして見せに来てくれた。