転職したら双子のイケメンがついてきた
「………あれ??」
気がつくと、車の助手席に寝かされていた。帰りの道中らしい。
濡れた服の上から店のロゴ入りの薄いジャンパーが掛けられていた。
ふと見ると、壬言さんもずぶ濡れなのに。
「気がついたかバカ女」
いつもにまして無愛想に言葉を投げつける。
前を向いたまま、ちらりとも向けようともしない。
「……私、どうして…」
「猫はあのまま連れてきたぞ。一旦、動物病院で、マイクロチップの確認をしないといけないからな」
「……助けてくれたんですか??ありがとうございます…」
ピクリと一瞬、眉を動かしたけれど、
「…助けたのは俺じゃない。通りすがりのイケメンだ。俺は蕁麻疹が鬼だからな、……っていうか普通ダイブするかあんなところから。金槌の癖に」
「……そうですよね、すみません」
小さくなる。
咄嗟に何も考えられなくなったのだ。
じゃあ、誰がどうやって助けてくれたのか。
疑問には思ったけれど、あえてそれ以上言わなかった。