転職したら双子のイケメンがついてきた

「今日はもういいぞ。風呂に入ってゆっくり休め」


「ありがとうございます」


ひとまず私を家に送り届けて、その足で動物病院に向かった壬言さん。


普通のことだろうけれど、妙に優しく思えてしまった。


部屋に帰ると、新聞に染み込んだハルの粗相の跡がある。夏場なので臭う。


「はあ、そうだった…」


ぐったりしながら雑巾で拭き、石鹸を付けて拭き、ようやくマシになった。


ふと気づく。
溺れた、ということは意識がなかったわけで。誰かが陸地に上げたわけで。たぶん人工呼吸したわけで。


……………うん???


いやまさか。ね。
あの生物アレルギーの壬言さんにそんなこと出来るはずないし。


じゃあ誰が、どうやって助けてくれたの???


改めて一人になって落ち着くと、やっぱりおかしい。と。


「う~~~ん………、まあ、いいか」


暫し悩んだけれど、疲れた。


「いいや、寝よ」


結局、その日は寝てしまった。もうぐったりで、爆睡だ。


――――翌日。


通勤用の自転車を置きっ放しだったので、バスで途中まで行って、歩いて店に着いた。


「昨日は大変でしたね。お疲れさま」


真言さんに労われ照れる。


「勢いで飛び込んじゃって、ご迷惑お掛けしました」


壬言さんは出ていた。
ハルは奥にいるようだ。


「おや??そこは初耳ですよ??大丈夫だったんですか?ハルくんを取り返したとしか聞いてませんが」


「そうなんですか??」


余計なことを口にしたと思った。壬言さんもあの後、着替えて店に帰ったんだろうか。



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