転職したら双子のイケメンがついてきた


「稲垣くん??帰ってたの??課長が連絡してくれって…」


と、通用口から可愛らしい感じの女性が小走りにやって来た。


うろ覚えだけれど、たぶん例の受付嬢だ。


小柄で、目鼻立ちがはっきりとした、そこはかとなく華のある、品のある明るい感じだ。


肩までの栗色のゆるふわな髪をハーフアップにしている。自分が可愛いことを知っていてアピールするタイプだ。


男受けはいいだろう。
が、


「どちら様…??」


私たちに気付いた受付嬢は、まだ仕事中かと思ったようだ。
営業先の人間に外で捕まったのだと。


「…イケメン…」


比較的静かな場所とはいえ、ぽろっとこぼれた言葉を、誰もが聞き逃さなかった。


口元で手をグーにしたブリッ子ポーズで、確実に、目がハートになっている。彼氏の目の前で。


「七菜(ナナ)ちゃん…」


君まで、と、動揺する稲垣くんの声にハッとする。


「確信しました。これを課長さんにお渡しください」


言うと、七菜と呼ばれた受付嬢に封筒を渡す。


「これは……??」



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