転職したら双子のイケメンがついてきた


小型のナイフだ。


あっとなった私は、反射的に動いた。それこそ何の護身術的なものも知らないくせに。


一瞬遅れて私の動きに気づいた真言さんが、素早く手を差し伸べた。


「あっ…」


「…いっ」


ギリギリだった。私の手より僅かに早く、小型のナイフの刃先を握った真言さん。
持った手を掴む間がなかった。


「きゃあっ!?」


悲鳴を上げる私。
真言さんの手から血が滲んだ。


「茉莉子さまは、茉莉子さまは渡さない!!そんな男に!!」


「えっ!?」


「…そう来ましたか」


当然男だとばかり思っていたストーカーは女性で、飲み物を運ぶウエイターの姿で紛れていたらしい。


しかも、比較的小柄なわりに腕っぷしがいいらしく、そのまま真言さんの手からナイフを放すと、壬言さんの背中に肘を入れた。


「うっ!?」


弱っているところに不意打ちで背中を打たれ、膝から崩れる。


咄嗟にウエイターの足を蹴った私。何とか助けなくては、この場を何とかしなくてはという思いで必死だった。



< 84 / 383 >

この作品をシェア

pagetop