転職したら双子のイケメンがついてきた
小型のナイフだ。
あっとなった私は、反射的に動いた。それこそ何の護身術的なものも知らないくせに。
一瞬遅れて私の動きに気づいた真言さんが、素早く手を差し伸べた。
「あっ…」
「…いっ」
ギリギリだった。私の手より僅かに早く、小型のナイフの刃先を握った真言さん。
持った手を掴む間がなかった。
「きゃあっ!?」
悲鳴を上げる私。
真言さんの手から血が滲んだ。
「茉莉子さまは、茉莉子さまは渡さない!!そんな男に!!」
「えっ!?」
「…そう来ましたか」
当然男だとばかり思っていたストーカーは女性で、飲み物を運ぶウエイターの姿で紛れていたらしい。
しかも、比較的小柄なわりに腕っぷしがいいらしく、そのまま真言さんの手からナイフを放すと、壬言さんの背中に肘を入れた。
「うっ!?」
弱っているところに不意打ちで背中を打たれ、膝から崩れる。
咄嗟にウエイターの足を蹴った私。何とか助けなくては、この場を何とかしなくてはという思いで必死だった。