転職したら双子のイケメンがついてきた
あり得ない。
乗せられていた車のエアコンが壊れた。
いくら私が壊し屋だからって。
触ってもいないのに。
どういうことか。
「マジか!!くそ暑いのに!!」
「…暑いっすね」
ふと聞いた声に、聞き覚えがあった。独特の声と訛りがあった。
特技という程のものはないけれど、そういうことはなぜか分かった。
「……真島(マシマ)くん…??」
「えっ!?」
言われた男が驚く。
大学生の頃、一緒にバイトをしたことがある男の子だった。
「……まさか、壊し屋の、真来さん…??」
壊し屋は余計だ、と顔をしかめる。確かに当時から、何だかんだ触ると機械の動作不良は起こしたけど。
自白したも同然だ。
ボスらしい男が慌てる。
「喋ってんじゃねえ!!」
「す、すいません」
真島も動揺するけれど、いろいろ聞きたくてうずうずしているようだ。
私も気にはなる。なぜ彼がこんなことになっているのか。
「あのっ、人違いなら解放した方がいいんじゃあ。このまま逃げても罪が重くなるだけっすよ」
「今さらそんなこと出来るか!!」
「俺たちの顔は見られてないはずだし、もしかしたらまだ間に合うかも。大ごとになる前に放してあげれば」