不思議の国の物語。
第二章 部屋の移動と殺し合い。
キィイ。
扉の軋む音がした。
でも、その少女は気づかなかった。
チラリ。 と見ても気づかない。
あたしは肩を叩き気づかせることにした。
トントン。
「こんにちは。」
「ん、あなたはだぁれ?」
会話がかみ食わない。 いや、言葉のキャッチボールが出来ていない。
「あたしはチョコだよ。」
「もう一回、ゆっくり言って。」
あたしは頷きゆっくり言った。
「あぁ、チョコちゃんね。 ごめんね。 耳が生まれつき聞こえないの。」
そう一気に言った。そしてあたしは分かった。何故言葉のキャッチボールが出来なかったのかを。
「そうなの。」
ゆっくり、ゆっくり言う。
「でも、ね。  目は少し見えるから。 字を書いてくれる?」
「う、うん。」
あたしは地面に字を書く。 木の棒があったから木の棒で。
「あなたの名前は何?」
「あたしの名前? えーっと…燐火(りんか)だよ。」
「可愛い名前だね。」
「あ、ありがとう//」
字と言葉の会話。 あたしは肝心のことを聞いていなかった。
< 11 / 83 >

この作品をシェア

pagetop