不思議の国の物語。
大道芸のおじさんと別れて三十分。
あたしは一人で過ごしていた。
ここは「孤独の部屋」というらしい。
あたしは孤独なんて馴れていた。 いつもあたしの町ではあたししか居ない。
だから、もう。 いい。 あたしは馴れていた。 こんな部屋で一人過ごすことも。
キィ。 扉がきしむ。
誰かが来たことに怯える。 
でも風の音だったらしい。 あぁ、どうしてあたしはこんなにも…。 
弱いのだろう。 もう、自分自身がいやになる。
人と関われない。 孤独になったからには。 孤独は寂しくはない。 孤独の部屋
であたしはゆっくり、ゆっくり眠りについた。

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