不思議の国の物語。
千世子は一人で過ごしていた。
もう,こんな自分が嫌だ。 慈悲(じひ)放棄(ほうき)になった。 
そんなことはしてはいけなかったのに。 千世子がこの世界を拒絶(きょぜつ)。否,もうどうでもよくなった時点でもうここの国は崩れるんだ。 
「もう,ヤダ。 なんで,なんであたしだけ? も,もうヤダぁあああっ」
「千世子ぉっ。 大丈夫?!って!」
燐火は一度見たら即,分かったらしい。
「ダメ! 千世子っ! やめてぇえっ!!」
 断末魔(だんまつま)の叫びのように燐火が叫ぶ。 
「え? ちょ,おい! 麻折」
 時艱が慌てる。 
 あたしは…気を失った。 けど,仲間達の声はせず,なんの音もしなかった──。


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