不思議の国の物語。

…何気ない沈黙(ちんもく)。　
その沈黙を破ったのは紛れもなく…──チョコいや，千世子だった。
「ねぇ，なんであなた達はここにいるの？　ここはあたしの世界でしょう？　なんで，この世界に住んでいるの？　ねぇ…───あなた達は…誰なの？　燐火も，黒戈もＪも麻折も…──あたしは知らない。本当の世界なんかであなた達とは会っていない。　それ以前にあなた達はあたしの味方？　本当に誰？」
　千世子はひとしきり疑問を投げかけまた気を失った。
そして，燐火は言った。
「ごめんね，ごめん。　ごめんね千世子。　あたしと黒戈はあなたの心の幻影(げんえい)。　影なの。　なりたいことってある。そのことが…──あたしたちなんだよ？」
　そして，燐火は謝り続けた。
麻折，そして時艱(じかん)は言った。
「千世子は多分会ったことあるはずなんだよ？　だって，あたしたち元は親友だったもんね？　お兄ちゃんは居なかったけどさ」
麻折は乾いた笑みを見せ，続けた。