ここで息をする
頭と身体の反応がちぐはぐすぎてやきもきする。精一杯の抵抗として無理矢理瞼を強く閉じ、暗闇の奥にすべてを押しやった。
今更あそこに戻りたいと思うことなんて、水泳に気持ちが傾くことなんて、あり得るはずがない。
三浦先生と水泳の話をして久しぶりに心が水泳のことで埋め尽くされているから、一時的に感傷的になっているだけだ。きっとそうに決まっている。
だからあり得るはずがない、これからもそう思うことなどないと、余計なものを振り払うように首を横に振りながら自分に強く言い聞かせた。
まとわりつく雨の湿った空気が、私の胸の中までじめじめと濡らすみたいで不愉快だった。
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梅雨入りして3日目。
初日は正午から夜まで降り、その翌日は雨が降ったり止んだりと一日中ぐずついた天気だった。
でも今日はからりとした天気で、まるで一瞬で梅雨を飛び越えて夏を迎えたんじゃないかと思うほどに、気温が高く暑苦しい日となった。
すっかり暑さにやられて気分が下がる中、ようやく迎えた放課後。
こんな日はアイスが食べたい。甘ったるいものよりも、さっぱりした味のアイスがいいなぁ。
そんなことを思いながら、水色に白い水玉模様が散りばめられているお気に入りのリュックサックに荷物を詰め込んでいた。
すると帰り支度を済ませたらしい真紀(まき)がショートカットの黒髪を揺らしながら私の席に来て、タイミングのいいラッキーな声をかけてくれた。
「ねえ、今日は駅前でアイス食べて帰ろうよ! 今ちょうど割り引きキャンペーンやってるみたいだし」
「いいね、行こう! ちょうどアイス食べたいと思ってたんだよ」
日に焼けた肌に映える白い八重歯を見せて笑う真紀に、私はすぐさま飛びついた。