ここで息をする


「季里(きり)も行くよね?」

「もちろん! アイス食べたーい!」


艶のあるストレートヘアーをサイドで一つに纏めている季里も、真紀に誘われるなり私と同じように浮かれた反応をしながらこちらに寄ってきた。

見合わせた顔は乗り気でみなぎり、言わずもがな全員の頭の中はアイスでいっぱいだった。


「確か新作のフレーバーが出てたよね」

「うん、季里が好きな抹茶系」

「やった、じゃあそれ食べよー。二人は何にする?」

「うーん、悩むなぁ。定番も期間限定もどっちも捨てがたいし!」

「真紀は悩み始めるとなかなか決められないよねー。私はシャーベット系にしようかな。暑いからさっぱりしたやつ食べたいし」


アイスクリームショップに寄り道することが即決し、さっそく三人でフレーバーの話で盛り上がる。楽しみなことに思いを馳せると、自然と頬が緩んでいた。


真紀はソフトテニス部、季里は料理部に入っている。

帰宅部の私とは違って普段二人には部活の予定が入っているから、放課後を一緒に過ごす機会はあまりなかった。だけど二人の部活の休養日が重なっている日には、たまに寄り道して帰ったりもしている。

今日はそんな貴重で楽しみな1日だ。

いつも一人で帰路につく放課後とは違うイレギュラーな時間に、何だか浮かれてしまう。

途中で放り出していた帰り支度を手短に済ませると、三人揃って教室をあとにした。

浮かれて弾む足並みに合わせて、自分のポニーテールの髪の先が揺れているのを感じた。







東校舎から渡り廊下を経由し、本館にある昇降口に辿り着く。

放課後に入って間もないせいか、そこは一斉に教室から吐き出された生徒でごった返していた。

全校生徒の下駄箱がここにあるわけだから、いくら学年やクラスごとに区切られているとしても、人の密度は全体的に高い。


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