ここで息をする


あんなに避けて遠ざけてきた私に、今更どんな顔をして二人と一緒に居ろというのだろう。

水泳をやめるとき、最後まで引き止めてくれた大事な友達の二人でさえも、拒むように関わりを絶ったんだ。

きっと傷つけてしまった。何度も気を遣わせてきた。

……それでも、歩み寄ろうとしてくれる。何度も、今もずっと。

私が二人を手放そうとした日から、二人は私を手放すことを選ばなかった。いくら友達とはいえ、こんな最低な私のことなんて放っておけばよかったのに……。

そんな二人に抱くのは感謝より謝罪の思いが強くて、二人が気持ちにどう応えるのが正解なのか、どれだけ考えてみても分からないんだ。

私は結局、二人との関係をどうしたいのだろう。


「……そういえば波瑠ちゃんってさ……」


胸の中に濁ったものが渦巻く最中、沙夜ちゃんが何やら話題を振ってくる。前を歩いている航平くんも時々振り返って話に入ってくる。

だけど私の耳に届く会話の内容は何だか他人事のように聞こえて、二人がどれだけ楽しげに笑っていても、今はただ、愛想笑いでやり過ごしてしまうだけだった。







プールのシーンやキャスト全員が揃って行う撮影はしばらくお休み。だけど監督から“ハル”の単独シーンをいくつか撮るという指示を受けて、私は今日、映画研究部の部室に来ていた。


「へえ、佐原先輩って作曲出来るんですね。音楽は全部、こうやってオリジナルで作ってるんですか?」

「そうよ。私が入部したときに居た先輩も作ってたし、その先輩が引退してからは私が引き継いで作ってるの。代々誰かしらがこのシンセサイザーを使って作ってるみたい」

「すごいですね、何でも一から作ってるなんて」


ノートパソコンに繋いだシンセサイザーを使ってBGM制作をする佐原先輩から話を聞いて、ほう、と感嘆の息が漏れた。


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