ここで息をする


「あっ、波瑠。もういいの?」

「うん。ちょっと人とぶつかっちゃって、それを謝ってただけだから」

「そうなの? 何か話し込んでるみたいだったから、知り合いなんだと思ってたよ」


真紀と話しながらもしっかりこっちの様子を見ていたことが窺える季里の言葉に、ぎくりと肩が上がりそうになった。


「あー、一人はね、知り合いなんだ。私がぶつかった人と友達だったみたい」


確認したわけではないけど、さっきの二人の話し方を聞く限り仲が良いのだろうと勝手に解釈して説明しておいた。その二人はまだ同じ場所に居るのか、真紀と季里は私の背後のガラス戸に視線を向けている。


「ねえ、早くアイス食べに行こうよ。外暑すぎー」


これ以上航平くんとの関係を問われるのも困るし、背後の航平くんに再度声をかけられるようなことも避けたくて、早くこの場を去ろうと二人の気を引きながら先に歩き出す。

迫るようにじりじりと照りつけてくる太陽の下を歩き出せば、さすがにもう航平くんが呼び止めてくることはなかった。







駅前のアイスクリームショップで涼んで外に出る頃には、辺りの空気も少しばかり過ごしやすいものに変わっていた。


「じゃあ波瑠、また明日ね!」

「バイバーイ」

「二人ともまたね」


学校帰りの学生で賑わう夕方の駅前通りで、真紀と季里と別れた。

電車通学の二人は駅構内に向かって歩んでいく。私は駅前のロータリーの一角にあるバス停を目指した。

特に焦るわけでもない足取りで進みながら、楽しかったなぁ、と心地良い余韻に浸ってさっきまでの時間を思い出していた。

今日は先にお気に入りの雑貨屋を回って、それからアイスを食べに行った。

イートインスペースがある店内で他愛ないお喋りに夢中になって盛り上がり、久しぶりに充実した放課後を過ごせたように思う。


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