家族の絆
 日頃から、大体帰宅は11時ごろであり、前もって時間を作っていてもなかなか自由にならないのは仕方なかった。したがって、デジタル放送研究会のように外出の時は比較的その後が、自由になった。5月22日以来、何度も約束をすっぽかしてしまい、今日こそは、しばらくぶりにユキに会えると楽しみにしていたが、この日のデジタル放送研究会の会議中に携帯に電話が入り、メッセージが残っていた。研究所長からのもので、話をしたいので、晩(おそ)くてもいいから会社に戻ってくるようにとの内容だった。ユキには、今日は近くまで来ているのだが、これから会社まで帰らなくてはならなくなったと、またしても伝えることになってしまった。会議が終了すると、いつものように、みんなと歓談することもなく、会社に戻り着いたのは7時少し前だった。
 岩城研究所長は席にいた。
「急に申し訳なかったのだが、この前話したことが、明確になったので、少しでも早いほ
うがいいと思って帰ってきてもらった」
「この前のことといいますと・・・」
「査定の件だが、やはり好ましくない方向で結論が出てしまった。申し訳ないが、そういうことなので、研究所としての成果をあげるよう頑張ってもらいたい!」
 現実のことになってしまったかと愕然としたが、いまさら悔やんでも仕方のないことだと思った。
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