家族の絆
 その日はそのまま家に帰ったので、8時を少しも過ぎていなかった。まだ、絵梨は塾から帰ってきていないという。しばらくしたら迎えに行くからという絵美に、実は、今晩は何も食べてこなかったのでなにか用意できないかというと、急いで、冷奴や餃子、それに冷凍物の八宝菜のようなものを暖めてくれた。絵美は用意を終えると迎えに出掛けてしまった。
 風呂から出たばかりの純一は、祐一を見かけて話し掛けてきた。
「お父さん、今日は早いんだね」
「ああ、ちょうどよかった、少し話をしないか!」
 純一と話をしておくと絵美にいったのは3月の、まだ新学期前だった。連休中に一度、簡単に聞いたことはあるが、その時のことも絵美には伝えておいたが、今も、いい機会だからもう一度確認してみようと思った。
「僕も話がしたかったんだよ。今度、サッカークラブでレギュラーになったんだよ。まだフォワードにはなれないんだけど、でも、ミッドフィルダーで、一所懸命やろうと思っているよ。みんな合わせて11人でやっていくスポーツだからそのポジションでの役割をそれぞれが果たさないといけないと思うんだよ!」
 質問をする前に答えを言われてしまった感じで、6年生になると少しは大人びた意見をいうようになるものだと感心させられた。そうこうしているうちに、絵梨を連れて絵美が帰って来た。時間は9時をかなり過ぎていた。
「お父さん、今日は早いね」
 絵梨も純一と同じことをいった。
「毎日こんなに晩(おそ)いのか!」
 帰りが大体11時ごろだから、子供たちの普段の様子が把握できていない自分を感じていた。
< 27 / 204 >

この作品をシェア

pagetop