家族の絆
 7月に入っても慌ただしさは一向に変化しなかった。暑い日は35度を超えて、外出には耐えられなかった。それに台風も季節はずれと思うが、この時期に日本列島を直撃したり、掠めたりしていくものもあった。
 デジタル放送研究会の7月に行われる活動報告会はすでに3ヶ月以上前から予定が決まっていたので委員のみんなに案内を出す必要はなかった。7月18日当日は、業界や大学関係の有識者からもったいないほどのお褒めの言葉をいただき、輝かしい気持ちにさせられた。しかし、それが全く評価に結び付かなければ、何の意味もないと空しい気持ちになった。報告会のあと慰労会があり、会社の枠を越えて大きな目標に向かって作り上げた成果に対して、お互いに称賛しあった。その慰労会のあとも富士通の中島さんを含めて5、6名でクラブ〔水蘭〕に向かった。
 精神的な不安定さをユキがそばに居ると癒されていると思うようになっていた。特になにを話すというわけでもないが、他の人が話していることにうなずくしぐさもお絞りを手渡すしぐさも訳もなくかわいいなあと思うようになっていた。
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