家族の絆
 ユキから、女将さんの話をしてもらうことになっていたが、未だに実現しないでいた。この間、ぼそっとあの店、居酒屋〔寄り道〕を閉めたような話をしていたが、一体どういう状況になっているのだろうか?クラブ〔水蘭〕に行くかもしれないとユキには電話で伝えていたが、いまさら、女将さんの話を聞いたところで、どうしようもないと、思い始めていた。どうして、3月の時点で親父さんが亡くなったとユキから聞いたときに直ぐにでも、女将さんを訪ねなかったのかと自分を責めざるを得ないような気持ちになっていた。そのために、ユキに会いたいという気持ちとは裏腹に、会うの避けたいという気持ちも抱いていた。

 幹事会の後、会議のメンバーと軽くいつものように飲んで、クラブ〔水蘭〕には立ち寄らないで、結局、そのまま家に帰った。それでも会社にいるよりも早く家に帰ることができた。いつもは11時頃にやっと家に帰り着くような状態だから9時に家に着くのは夜の時間をゆったりと楽しむ機会に恵まれることになる。その夜はジョーからのメールが引っかかっていた。そのために、この夜はジョーからのメールをじっくり読み直す時間になった。内容的には面白そうだが、USD30.5Mというと日本円に換算すると40億円近い額である。その10%としても4億円にもなることに現実離れしていると感ぜずにはいられなかった。それほどの額を扱うことに対して背筋に寒いものを感じたが、却って、興味をそそられることのように思われた。
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