家族の絆
 翌日もいつもと変わりなく6時ごろには目覚めて、味噌汁と焼き魚のいつもと変わらない朝食をゆったりと食べて、いつもと同じように7時ごろには出かけた。青葉台の駅まで歩いて10分ほどの距離である。そこから研究所のある宮崎台まで15分ほど電車に乗って、更に15分ほどゆったり歩いて職場に着く。待ち時間を入れたり、道草の時間を入れたりしても一時間以内でドアツードアで行き到くことができる。その朝も8時前には自分の席に座ることができた。
 通勤の間中、昨日のジョーからのメールのことが気に掛かっていた。それも、この時ばかりはもっと具体的に、なぜ自分のメールアドレスにジョーからのメールが送られてきたのか不思議だと思うようになっていた。初めは返事することはないと思っていたが、まずは、なぜ自分のメールアドレスを知り得たのか?そのことを聞きたくて返事を書いた。ジョーへの返事のメールはそれだけの簡単なものだった。

 メールを送付した後で、思い出したことがある。それは、4月にロンドンで開かれた国際会議に出席したときに、唯一の黒人、あの南アフリカの出身だと聞いた彼のことが頭をよぎった。ひょっとして、あの国際会議に出席したメンバーに同じようにメールが送付されているのだろうか?あの時、同じテーブルに着いていた人がいうには、彼は数10億円を手に入れたような話をしていたが、総額としては同じような金額なのかもしれない。ただ、税金とか手数料を差し引くと、おそらく一割に満たないものになるだろうと想像していた。あるいは、南アフリカとナイジェリアとは全く違うが、彼自身が本国の南アフリカで、自分が海外で生活していることを利用して自らが仕組んでいたのかも知れない。とはいえ、本当のところは皆目見当のつかないもので、根拠も全くないし、想像の域を出なかった。
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