君の瞳に映る世界


病気が進んでいけば、きっと忘れてしまうものが多くなる。




記憶と共に、人の事も忘れていく……




親の事も、友達の事も、私の事も。




そしたら……逢坂くんは1人ぼっちになる?




そう思ったら、胸が締め付けられた。




逢坂くんが、儚く見えた。




彼の顔が、なんだか悲しそうに見えた。




そう思ったら、私は自然と逢坂くんの手を握っていた。




「里沙、ちゃん……?」




「私、忘れない」




私は、逢坂くんの目を、まっすぐに見た。




「私は、逢坂くんの事忘れない。

 ずっと覚えてる。

 私を忘れちゃってもいいよ。

 何回でも、私の事、覚えてもらうから」




「里沙ちゃん……」




逢坂くんは、少しだけ切なげな顔で私を見ていた。




あなたは私を救ってくれたから。




今度は、私があなたを救いたい。




だから……



「逢坂くん、私はあなたを忘れない。

 1人になんか、させないから」




握った手に、さらに力を込めた。




逢坂くんが、このまま消えてしまわないように。




1人に、ならないように。




< 100 / 129 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop