君の瞳に映る世界
病気が進んでいけば、きっと忘れてしまうものが多くなる。
記憶と共に、人の事も忘れていく……
親の事も、友達の事も、私の事も。
そしたら……逢坂くんは1人ぼっちになる?
そう思ったら、胸が締め付けられた。
逢坂くんが、儚く見えた。
彼の顔が、なんだか悲しそうに見えた。
そう思ったら、私は自然と逢坂くんの手を握っていた。
「里沙、ちゃん……?」
「私、忘れない」
私は、逢坂くんの目を、まっすぐに見た。
「私は、逢坂くんの事忘れない。
ずっと覚えてる。
私を忘れちゃってもいいよ。
何回でも、私の事、覚えてもらうから」
「里沙ちゃん……」
逢坂くんは、少しだけ切なげな顔で私を見ていた。
あなたは私を救ってくれたから。
今度は、私があなたを救いたい。
だから……
「逢坂くん、私はあなたを忘れない。
1人になんか、させないから」
握った手に、さらに力を込めた。
逢坂くんが、このまま消えてしまわないように。
1人に、ならないように。