君の瞳に映る世界
『色の無い絵って、意味あるの?』
「っ……」
ピタッと、筆が止まってしまった。
……いつの日か、先輩に言われた言葉。
今でも、覚えてる。
それを思い出した途端、キャンパスの中の世界は、進化が止まってしまった。
……今日は、ここまででいいや。
止まってしまったスケッチブックを、私はそっと閉じた。
「……また、暇になっちゃったな」
そう呟いた瞬間、部屋の扉が開いた。
「え……」
「美咲ちゃーん、新しいお話持ってきたよー」
ヒョイッと顔を覗かせたのは、私と同い年くらいの男の子。
パジャマを着てるから、ここに入院してる人、みたいだね。
っていうか……
「誰ですか」
私にこんな知り合いの男の子なんていない。
訝しげに彼を見ていると、気まずそうに頬を掻いた。
その仕草は、なんだか少し可愛く感じた。
「あれ……ここ、葉柴美咲(はしば みさき)ちゃんの病室じゃない?」
「多分、違うと思います」
「……あー、そういえば病状が軽くなったから、部屋が変わるんだって言ってたっけ……」
ブツブツと何か呟いている彼を見て、私は首をかしげた。