君の瞳に映る世界
Knew you
提案通りに、彼は毎日私の部屋に来た。
午前中も、午後も、彼はずっと部屋にいた。
まさか、ほんとに来るなんて……
『僕が毎日自分の話をしたら、僕は君の“知ってる人”になれると思うんです。
もちろん、君の話も聞かせてくれたら嬉しいですけど』
『だ、駄目です。
だいたい、他の患者の部屋に入っていいんですか?
患者同士で話すなら、専用の部屋に行かなきゃ駄目なんじゃないんですか?』
『決まりではそうなってるけど、僕は特別な許可を貰ってるんで大丈夫です。
それより、どうですか?
僕とお話してみません?』
『でも……』
『今、動けなくて退屈でしょう?
いい暇つぶしにはなると思いますよ』
『う……』
“いい暇つぶし”という言葉に惹かれて、言葉を詰まらせてしまった。
それを了承と思ったのか、その日彼は上機嫌で帰っていった。
その後、変な人じゃないか看護師さんに聞いてみたけど、ニコニコしながら答えてくれたから、変な人ではないらしい……
警戒しまくって、毎日その人を部屋に入れてたけど、今日まで何も起こらなかったから、私も気を緩め始めた。