君の瞳に映る世界
「……うん」
クンッと軽く私の手を引く彼。
「あ、ちょっと待って……」
「ああ、ごめん、ゆっくりでいいよ」
ゆっくりと起き上がる私を、彼は優しく支えてくれた。
松葉杖を使って、立ち上がり、歩き出すまで、ずっと私の体を支えてくれていた。
「大丈夫?歩けそう?」
「うん、大丈夫」
「良かった。
じゃあ行こう、ゆっくり」
「うん」
そう言って病室を出ようとした時、彼はふいに立ち止まった。
「あ」
「どうしたの?」
「君を紹介する前に、僕は大事な事を忘れてるのに気付いたよ」
すると、彼は私のほうに振り向き、優しく微笑んだ。
「君の名前、教えてくれないかな」
「あ……」