君の瞳に映る世界
そっか、まだ教えてなかったっけ。
私の“知ってる人”になるまで、この人は本当に私の名前を聞かなかった。
約束を、守ってくれた。
「……名前なんて、病室のドアに書いてるじゃん。
それ見れば、すぐに分かるでしょ」
「そだね、でも……」
君の口から、聞きたいんだ。
綺麗な、澄んだ声でそう言った彼。
なんでそんな恥ずかしい言葉を、そんな涼しい顔して言えるのかな。
赤くなりそうな顔を、俯いて隠した。
「……里沙」
「え?」
「三津島、里沙」
恐る恐る、顔を上げると、彼は心底嬉しそうな顔をしていた。
「ありがとう、里沙ちゃんっ!」