君の瞳に映る世界


どうして、そこで黙るのよ……




私は、グッと拳を握り締めた。




「あの絵……私が描いてたの、幸ちゃんも知ってたよね?

 どうして、守ってくれなかったの」




まだ、何も言ってくれない。




苦しいとき、辛いとき、幸ちゃんなら傍にいて、味方してくれるって思ってたのに……




あの時も、今回も、幸ちゃんは一緒にいてくれないんだね……




友達だから、そうしてくれるって思ってたけど、違うんだね。




そう思ったら、急に目が熱くなって声が震えた。




「そっか。

 友達だから、味方してくれると思ってたけど……

 友達だと思ってたのは、私だけだったんだね……」




「っち、違う!

 そんなことないよ!!」




「うるさいっ!!」




そう怒鳴ると、幸ちゃんがビクッと体を震わせるのが、目の端に映った。




「もう、帰って!

 あんたの顔なんか、2度と見たくない!!」




両目に沢山の涙を溜めながら、私は顔を上げた。




滲む視界の中で、ぼんやりと幸ちゃんが見えた。




よくは見えなかったけど、困惑してるみたいだった。




「大嫌い……!」




擦れた声でそう言うと、幸ちゃんは、ゆっくりと俯いた。




そして、小さく呟いた。




「……ごめんね……」




フラフラと扉の方まで歩いていくと、彼女は静かに部屋を出て行った。




< 54 / 129 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop