君の瞳に映る世界
「多くの本を書けば、それは僕を広く知ってもらえる事になる。
そうすれば……そこには、僕が生きた軌跡が残る。
だから僕は、作家になりたいんだ」
その時の横顔は、ずっと忘れないと思う。
今まで会ってきた、どんな人よりも、今まで見てきた、どんなものよりも
輝いていたから。
そんな彼から、目が離せなかった。
ドキドキと、ハッキリ分かるほど強く脈打つ心臓。
熱く、火照る体。
あ、この感じ……
私、知ってるかもしれない。
だけど、認めたくない。
認めたら、いけない気がする……
「素敵な、夢だね」
「そうだね、お互いね」
そう言って、逢坂くんは私に向かって微笑んだ。
私も、モヤモヤする気持ちを抱えながら、彼に笑いかけた。
だけど、私はこの時、気付かなかった。
私達に残された時間は、あとわずかだったということに。