君の瞳に映る世界
「だけど、まさか好きになるなんて思わなかったよ……」
どうして、なんて、本当は理由だって分かってるくせに。
まだ少しだけ、この気持ちを認められないでいた。
まさか、自分が恋をするなんて思ってなかったから。
頭の中は、ひどく動揺してしまった。
だって、そうだろう。
この狭い世界でずっと生きてきて、これからもここで生きていくことが決まっている人生の中に
恋愛なんて予定は、全くなかったんだから。
「っくそ……」
僕は自分の髪をクシャッと握り締めた。
『ありがとう、逢坂くん』
目を閉じれば、すぐに思い浮かぶ、君の笑顔。
温かい、優しいその笑顔に、惹かれずにはいられなかった。
もっと、色んな顔を見てみたい。
もっと、名前を呼んで欲しい。
もっと、君に触れてみたい。
もっと……君と一緒にいたい。
「でも、駄目なんだ……」
僕には、それが出来ない。