君の瞳に映る世界
また、その話ですか。
ここ一週間、その話しかしてませんよ。
「まだ、先生に話してないことがあるんじゃない?」
「あの……もう、何度も話しましたよね。
私が、先輩に掴みかかって、誤ってそのまま落ちたって」
「そうだけど……」
「先輩も、そう言ってるんでしょう?」
そう言うと、先生は黙ってしまった。
「それが真実で、全てですよ。もう、いいじゃないですか、それで」
分かってください。
もう、目立つようなことはしたくないし、事を荒立てたくないんです。
誰も、私の言葉なんて、信じないだろうから……
すると、丁度よく院内放送が流れ、面会時間が終了した。
時間が来ても、なかなか立ち上がらない先生に、私は覗き込むように声をかけた。
「先生、時間ですよ。あんまり押すと、病院にも迷惑ですから……」
すると、先生はやっと腰をあげた。
「……また、来るわね」
そう言って、先生は部屋を出て行った。
「もう、来なくていいですって……」
ため息をつきながら、窓の外を見やった。
太陽は、地平線に沈みかけていた。