君の瞳に映る世界
そう言って、彼に連れられて着いたところは……
「わあ……」
海が見える場所だった。
病室にいるときよりも、広い範囲で見える。
かすかに聞こえる漣の音、潮の香り。
海を見ながら、横で逢坂くんが呟いた。
「……今日は、静かな海だ」
「そうなの?」
「うん。
全体的に、波が落ち着いてる」
「へえ……」
コレが、落ち着いてる海なんだ。
最後に海を見たのは、いつだっけ。
海って……どんな色なんだろう。
「どう?綺麗な海でしょ?」
「え……」
微笑みかけてくる逢坂くん。
言わなきゃ。
本当の事、伝えなきゃ。
「……逢坂くん」
「うん?」
私は、彼に向き直った。
そして、震える口で勇気を振り絞って、言葉を紡いだ。
「海って……どんな色なの?」