君の瞳に映る世界
逢坂くんは、一歩前に出て、話を始めた。
「実は、僕も里沙ちゃんに黙ってたことがあるんだ」
「え?」
「僕の、病気のこと」
「!!」
逢坂くんの、病気……
そういえば、聞いたことなかった。
「僕は……いろんなものを忘れていく病気なんだ」
「え……?」
「友達の顔も、昔の思い出も、やがて呼吸の仕方だって忘れていく」
逢坂くんは、どこか遠くを見て、そう言った。
「忘れてくって……記憶喪失ってこと?思い出せたりはしないの?」
すると、逢坂くんは首を横に振った。
「僕は、もうだいぶ前に両親の事を忘れてしまった。
今も……思い出せないんだ」
「っ!!」
あまりの衝撃に、私は言葉を失った。
知らなかった……
逢坂くんの病気が、そんな悲しいものだったなんて。