君の瞳に映る世界


逢坂くんは、一歩前に出て、話を始めた。




「実は、僕も里沙ちゃんに黙ってたことがあるんだ」




「え?」




「僕の、病気のこと」




「!!」




逢坂くんの、病気……




そういえば、聞いたことなかった。




「僕は……いろんなものを忘れていく病気なんだ」




「え……?」




「友達の顔も、昔の思い出も、やがて呼吸の仕方だって忘れていく」




逢坂くんは、どこか遠くを見て、そう言った。




「忘れてくって……記憶喪失ってこと?思い出せたりはしないの?」




すると、逢坂くんは首を横に振った。




「僕は、もうだいぶ前に両親の事を忘れてしまった。

 今も……思い出せないんだ」




「っ!!」




あまりの衝撃に、私は言葉を失った。




知らなかった……




逢坂くんの病気が、そんな悲しいものだったなんて。




< 99 / 129 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop