世界のまんなかで笑うキミへ


頭上に広がる青い空が、グラデーションをつくっていた。


今日の午前十時前、私の家の最寄り駅に、颯が電車に乗ってやってくることになっている。


今から駅へ彼を迎えにいって、それから駄菓子屋へ行く予定だ。



見慣れた地元の住宅街を歩きながら、何故だか心臓がいつもより早く脈打つのを感じる。


私は一体、何にドキドキしているのだろう。


男の子とふたりきりでどこかへ行くのは初めてだからか、それとも颯を描くのが楽しみだからか。


歩くたび、がしゃがしゃとバッグの中の画材が音を立てた。そのリズムに急かされるように、私は駅へと早足で歩いた。







「おはよー、理央」



日曜日だからかいつもより人が少ない駅の改札を通って、颯は爽やかな笑顔で私に声をかけた。




< 102 / 282 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop