世界のまんなかで笑うキミへ
「……おはよう」
「え、なに?テンション低くね?」
「ひ、低くないよ」
いざ颯の顔を見たら、なんだかさらにドキドキして、挨拶がぎこちなくなった。
……なんで颯相手に緊張なんかしてるんだ。今までだって、ふたりきりでいたときの方が多いくらいなのに。
颯の私服姿を見るのが初めてだから、とか。
彼の姿が私の地元の駅にあるのが信じられないから、とか。
私に会うためにこのひとはここにいるんだと、今更実感してしまったから、とか。
いくつか理由は思い付いたけれど、それを認めるのは恥ずかしかった。
今まで通り今まで通り、と自分に言い聞かせながら、口を開く。
「じゃあ、行こっか」
「おー」
歩き始めた私の隣に、上機嫌な颯が並んだ。私より十五センチほど高い颯を、ちらりと見上げる。
颯の柔らかそうな髪が、ふわふわ風に揺れていた。