世界のまんなかで笑うキミへ
「駄菓子とか食べるの何年ぶりだろー、超楽しみ」
「……駄菓子の他に、おもちゃとかアイスも売ってるよ」
「まじで!あー、アイス食いてえなぁ」
まだ五月末だけれど、確かに今日はいつもより暑い気がする。
よほど楽しみなのか、颯は辺りを見回しながらずっとニコニコしていた。
高校がある市より田舎なこの街は、お店より一軒家の数の方が多い。
低い建物ばかりだから、空がとても高く広く見える。
私は穏やかで平和なこの街が好きだけれど、もう少し人通りがある街並みに慣れた人にとっては、きっとなんにもない場所に見えてしまうだろうとも思う。
だからじっくりと見回すようなものでもないと思うのだけれど、颯は瞳を輝かせて辺りを見つめていた。
初めて彼が美術室に訪れたときも、この顔をしていた気がする。あと、海に行ったときも。
知らない場所にくるとワクワクしてしまう気持ちはわからなくもないけれど、美術室も海もこの街も、特別魅力がある場所というわけではない。
なのに颯は、毎回感動したような顔をしてその場所に目を向ける。
これが彼の普通なのだろうか。だったら颯はちょっと変わっていると思う。