世界のまんなかで笑うキミへ



「………ねえ、颯」



声をかけると、颯は「ん?」と言ってこちらを向いた。



「………颯の想い出づくりに付き合うの、本当に私でよかったの?」



知り合って数日の私じゃなくて、仲の良い友達の方がよかったのではないか。


今更だけれど、やはり思ってしまう。


私は転校を経験していないから気持ちはわからないけれど、大体の人はこういうとき、大切な友人と過ごしたいと思うはずだ。


だけど颯は、当たり前だろうと言わんばかりの顔で「うん」と言った。


「『うん』って………」


あまりにあっさりと頷かれて、面食らう。颯は私を見て小さく笑ってから、前を向いた。



「いーんだよ、もう。いつもつるんでる奴らとは、学校の中だけで充分想い出つくれるし。それより俺は、理央の絵が見たい」



颯は少し顔を下に向けて、目を伏せた。


長いまつげが影を作るのを、私は瞬きも忘れて見つめていた。




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