世界のまんなかで笑うキミへ
答えになっていない私の返事に、颯が苦笑いする。
「なんでそう思ったの?」
「……わかんない。口で上手く説明できない。ただ、あんなに描きたいって思ったのは、久しぶりだったの」
久しぶり、と口にした私に、颯が笑うのをやめた。ハッとしたような顔をして、私を見つめる。
私はただ淡々と、気持ちを話した。
「とにかく描かなきゃって思って、そればっかりだった。でも楽しかったんだ。上手く塗らなきゃとか、そういうのなんにも考えずに塗ったの、久しぶりだったから」
今の私の絵じゃ、上へはいけない。認めてもらえない。
それはわかってる。だから私は展覧会の日から、描きたいと思える風景を見つけては、塗りの練習ばかりしていた。
はじめはやる気に満ちていたけれど、練習すればするほど正解がわからなくなっていって、だんだんと楽しくなくなっていった。
絵を描くことが楽しくなくなるのが、怖かった。嫌いになりたくなかった。
だけど海で颯を見たとき、『私の』塗り方じゃなきゃ、これは表現できないと思った。