世界のまんなかで笑うキミへ
きみにはわからない
あれから、颯は苦い顔をして「今日はもう帰るよ」と言った。
私がずっと呆然としていたというのもあるだろうし、彼自身が混乱していたというのもあるだろう。
颯は私を家まで送ると、やっぱり最後は笑顔で「また明日ね」と言った。
「……うん。また明日」
ちゃんと明日も、彼は学校に来る。会うことができる。
そのことを暗に含んで、颯は言ったのだと思う。私を安心させるために。
颯が駅へと歩いていって、私も家の中へ入った。
まっすぐ二階へあがり、自分の部屋に入って、またぼうっとした。
なんで颯の身体は、透明になるんだろう。
なんで颯自身は、そのことに気づけないんだろう。
同じ疑問が頭の中をぐるぐると回る。
身体が透けるなんて、どこのファンタジーだ。
やっぱりこれは、夢なんじゃないかと思えてくる。だけど夢にしてはあまりにリアルで、私はこれが夢ではないことも、同時にちゃんと理解していた。