世界のまんなかで笑うキミへ
やがてお母さんも席について、ふたりで朝食を食べ始めた。
テレビでは朝のニュース番組が流れていて、政治とか事件とか、平凡な家庭の高校生には途方もない話題が、延々とされていた。
「あら、殺人事件ですって……怖いわねえ。理央、あんまり夜遅くに帰るのはやめなさいね」
「………うん」
「ああそう、そういえば。昨日ね、おじいちゃんから電話があったの。たまには顔を見せに来なさいって。おじいちゃんが入院してたのは何年も前の話だし、今はまだ元気だけど、行けるときに顔を見せた方が………」
お母さんはそれからもずっと話していたけど、私の耳にはあまり入ってこなかった。
適当に「うん」と頷いていただけだった気がする。内容はちっとも頭に残っていない。
考えるのは、颯のことばかりだ。
*
学校では、なるべく気丈を努めて過ごした。
廊下なんかで見かける颯は、やっぱりいつも通り人に囲まれ笑っていて、少し腹が立った。
私だけ、こんなに悩んでるみたいだ。当事者は颯なのに。
なんだか馬鹿らしくなってきて、昼休み頃には颯のことを考えるのはやめていた。