世界のまんなかで笑うキミへ
「……ってことがあったんだよ」
「あー、あいつそーゆーとこあるもんなぁ」
「悪気がねえのはわかるんだけど、ちょっとイラッとするんだよな」
「わかる、俺も俺も。自由すぎるのも大概にしてほしいよ、マジで」
……颯とはまるで結び付かないような単語がいくつも飛び出してきて、私は一瞬混乱した。
これは本当に颯の話?
別の人間のことを言っているのではないのか。
颯が他人に陰口を言われているところなんて、初めて聞いた。
……颯が悪く言われているところ自体、初めて聞いた。
「ちょっと空気読めねえとこあるよな、颯」
彼らの声は、それきり聞こえなくなった。
だけど私は、その場からしばらく動けなかった。
……颯は、よく人の顔を見ている人だと思う。
だけどときどき、周りが見えなくなる。自分の周りに漂う空気に気づかず、自由に振る舞ってしまうことがある。
それは彼が、自分の立場とか人からどう思われているのかとか、そういうところが少しばかり自覚できていないからだ。
私はそんな颯に腹を立てたことがある。
だけど、好ましく思う自分もいる。
自由で純粋で、ある意味どこか俗的なものから脱している彼は綺麗で、私はそこに惹かれていた。