世界のまんなかで笑うキミへ
よく考えたら、いつもそうだったじゃないか。
颯は、私が辛い顔をしているときに限ってよく笑った。彼自身は辛そうな顔は一瞬しか見せずに、すぐになんでもないみたいに笑っていた。
なのに私は、彼を責めることしかしなかったんだ。
気づいて愕然とした。なんてことをしたんだろう、私。
颯はきっと、何も知らないわけじゃない。
自分の立場も、周りからどう思われているのかも、ちゃんとわかっている。
わかった上で、いつも笑っている。
颯は綺麗だ。
純粋で、無邪気で、優しくて。
それは、彼がそうあろうとしているからだ。
私みたいにひねくれず、前を向いていようとしているから。
私と彼が違うのは、人から愛される絶対的な才能の有無なんかじゃない。
まっすぐでいようと努力しているか、していないかだ。
*
あのあと、急いで教室へ戻ってゴミ箱を置いて、私はまた早々に教室を飛び出した。
掃除時間はもう終わろうとしていて、早くに掃除を終えた生徒たちが、廊下を行き交っている。