世界のまんなかで笑うキミへ
他の人の目を、気にしていないと言ったら嘘になる。
颯と人前で話していると、やっぱりちょっと逃げてしまいたくなるときがある。
だけどこれ以上颯を傷つけたくなかったし、逃げればそのあと自己嫌悪することになるのもわかっていたので、ぐっとこらえた。
颯はまっすぐでいようするから、まっすぐなんだ。
なんにも努力せず、前だけを向き続けられる人なんかいない。強くいようと頑張るから、強くいられるんだ。
私も、そうなりたいと思った。卑屈なままじゃ、きっと私はいつまでも自分を好きにはなれないから。
そんなある日の放課後、美術室のドアが勢いよく開けられた。
「頑張ってるかー!美術部諸君!」
元気のいい声と共に現れたのは、ポロシャツに黒のカラーパンツというラフな格好をした若い女性だった。
「湯浅先生」
古田先輩が席を立って、一度頭を下げた。ちょうど来ていた颯と一緒に、私も頭を下げる。
美術部顧問である湯浅先生は、そんな私達を見て明るく笑った。
「いやー、そんなかしこまらなくていいって!私、ほとんど部に顔出してないしね!君たちは『今更何しに来たんですか』くらい言ってもいーのよ?」
冗談なのか本気なのかよくわからないことを言って、湯浅先生は笑う。